たいと
こんにちは、ニューヨークで美術史を学んでいるたいと(@taito212)です。

今回は、美術史上のアーティストの中から破天荒で型にハマらない人物について紹介します。

今回紹介する人:ギュスターヴ・クールベ

この名前を聞いたことはありますか?この人は一言でいうと近代絵画の父と言われた人です。

一番有名な絵はおそらく「石割人夫」

たいと
世界史を勉強した人でしたら教科書にも載ってる絵だね

実物は、第二次世界大戦の時に失われてしまったんですが、僕が初めて教科書でこの絵を見た時は「地味な絵だな〜」、「これのどこが近代絵画の父なんだ?」と思いました(笑)

しかし、この人実はかなり破天荒なロックンローラーなんです!

自己主張の強い人

クールベは、19世紀の前半に生まれた画家で、育ったのは割と真面目な家庭でした。フランスの裕福な家庭で育ち、絵を勉強しながら大学にも行きました。

しかし、20代前半にはこんな自画像を描いています。

なかなかインパクトのある自画像ですよね。この絵のタイトルは「絶望(自画像)」と言います。

癖の強そうな人だなという印象ですが、他にもこんな絵を。

この絵のタイトルは想像つきますか?実は、「世界の起源」と言うタイトル。

たいと
確かに、人は全員”そこ”から生まれてくるし。的を射てるんだけど・・・(笑)

斬新な絵を描いているとは言え、クールベのどこがロックンローラーなのか。実はクールベは世界で初めて個展を開催した人なんです。

まさに型破りの発想!世界初の個展を独断で敢行

個展と言えば今では当たり前にありますよね。美術館に集められた数多くのアーティストの作品を飾るのではなく、たった1人のアーティストによって作られた作品のみを展示するもの。それが個展です。

それまで、美術館以外でアートを鑑賞する機会といったら、サロンと言うスタイルが主流でした。サロンというのは基本的に政府や王立絵画彫刻アカデミーという権威を持った機関が主催する美術の展覧会。

アーティストはサロンに出展して審査を受け、賞をもらい、知名度を得ていきます。クールベもサロンに出展して入選を繰り返す中で、アーティストとしての知名度を高めていったのですが、ある年のサロンに出品した作品に対し、大批判を食らってしまいました。

その後、パリで世界で2番目に開催された万国博覧会にその絵を含む作品を何点か出展した際、他の絵は審査を通ったにも関わらず、その絵だけは落選してしまいました。

パリ万博に自分の絵を展示することができなくなってしまったクールベ。そこで彼は思いついたのです。

クールベは、世界中の人たちが集まる万博会場のすぐ側に急遽小屋を建て、「ギュスターヴ・クールベ作品展。入場料1フラン」という看板を立てて個展を開催したんです。

たいと
万博の前で個展をするなんて大胆だな〜

これが世界初の個展と言われています。

落選しようが関係ない!自分は自分の絵を展示するんだ!という、まさに破天荒な芸術家です。その個展の中で、彼は『リアリズム宣言』を打ち出し、「自分は生きた芸術を作りたいのだ」という言葉を残しています。

落選してすぐに諦めるのではなく、自分が落選した万博のすぐ目の前で勝手に展示会を開いてしまったクールベ。では、彼が落選し、自分で個展を開催してまで、人々に見せたかった作品はどんなものだったのでしょうか。

たいと
なんでクールベの絵は落選してしまったんだろう?

歴史を変えた絵画:オルナンの埋葬

それがこの作品、オルナンの埋葬です。この作品はクールベが生まれた故郷フランスのオルナンを描いたもので、タイトルの通り葬式の様子が描かれています。

これの何が問題だったのか。美術を鑑賞するする時は、その時代の風潮がどういう価値観や前提を持っていたのかというポイントを押さえておくと、スッと理解することができます。

当時のフランスと言えば、ナポレオンの遠征の様子を描いた英雄的な絵画の新古典主義や、それに対立する形で荒いタッチでダイナミックな絵を描くロマン主義が流行っていた時でした。

アルプスを超えるナポレオン/ジャック=ルイ・ダヴィッド

民衆を導く自由の女神/ウジェーヌ・ドラクロワ

誰もが一度は目にしたことがあるようなあのナポレオンの肖像画「アルプスを超えるナポレオン」やフランスの7月革命を描いた「民衆を導く自由の女神」。それぞれ、新古典主義とロマン主義の代表作です。

ロマン主義の流れから、同じようなタッチで描かれた風景画も大人気でした。

モルトフォンテーヌの思い出/ジャン=バティスト・カミーユ・コロー

これらの絵画のブームを頭に入れた上で改めて観ると、「オルナンの埋葬」が”ちょっとズレてる”のが分かると思います。

オルナンの埋葬

たいと
確かに他の絵と比べて全体的に薄暗いし、誰が中心人物なのかよく分かんない・・・

新古典主義のナポレオンの肖像で言えば「めっちゃかっこいい英雄!」、ロマン主義は「ダイナミックで美しい!」。そんな感情を喚起させるのが”正解”であり”美”とされていた時代において、クールベは葬式の絵を描いたんです。

しかも、描かれているのは、英雄でも歴史上の重要人物でもなく、ただのその辺の村人。いわゆる”大衆”です。

高揚感もなければ、歴史的な重要性もない。俗っぽくて悲しい。そんな絵を見て、「名もない村人の死なんか描くな!」これが当時の鑑賞者側の本音です。

ただクールベは、あえてこの名もない村人を描くことで、「真実を描くこと」を追及しました。

これはつまりブルジョワジー主体だった特権階級による立憲君主政が、労働者や農民による階級闘争に移ってきた歴史そのものであり、名もない村人こそが歴史を担う立派な主人公であるということ。

しかも、このパリ万博というのは、皇帝ナポレオン3世の強力な支持によって行われ、帝政の正当性を国内そして世界に誇示し、政治基盤を強化する目的で開催されたものでした。

クールベは、まさに特権階級の鑑賞者や万博側が見せたくなかった歴史を映し出した張本人であり、この絵は革命そのものだったんです。

たいと
クールベはわざと”大衆”を描いたんだね

まとめ

クールベは、歴史の流れに逆行して、敢えて”普通の人々”を描きました。それが彼にとって”リアル”を映し出すことだったからです。

パリ万博で自分の絵が飾られなかった。自分の絵が国や権力に認められないのであれば、自分の力でやってやる。そんな革命の気概がクールベの中にはあったんだと思います。

この展覧会で彼は一躍有名になりました。彼は芸術に関してこんな言葉を残しています。

これまでの習慣や、ものの考え方や、わが身に起こった重大事を、自分の価値基準に従って見直すこと;一言で言えば生きた芸術を創造すること、これこそ私が目指すところである

いかがでしたか?クールベが近代絵画の父と言われる由縁が分かりますよね。そういった文脈で絵画を観ると、もっとアートが面白くなるんじゃないかと思います。それでは!

 

もっとクールベの作品を知りたい人に

created by Rinker
¥15,653 (2019/08/23 18:58:46時点 Amazon調べ-詳細)

この記事を読んだ人にオススメ

好きなものを好きって言うこと。〜アートフェア参加レポート〜

アート好き必見!ニューヨークに来たら絶対みるべき100の絵画

レンブラント《自画像》作品解説

フェルメール《水差しを持つ女》作品解説

スポンサーリンク


当ブログではSTORK(ストーク)を使用しています。完成度が高くモバイルファーストなブログデザインが特徴的で、初心者におすすめのブログテーマです。


ABOUTこの記事をかいた人

たいと

ニューヨークに留学中の24歳。NY州立大学美術史専攻。2019年8月にコペンハーゲンでのアイアンマンレースを完走する為にトレーニング中。趣味は美術館巡り。