ニューヨークの道路事情。マンハッタンはどんな都市を目指しているのか

こんにちは、勝俣泰斗(@taito212)です。

最近、ニューヨークでは道路を巡る問題が相次いでいます。交通渋滞や環境問題、都市の景観などの問題から、ニューヨーク市は新しい交通手段が台頭することに慎重です。

ニューヨークのストリートは誰のものなのか。主役となるのは、伝統的なタクシー、ライドシェアサービス、電動アシスト式自転車、電動スクーター、自転車、そして歩行者です。

ニューヨークでUberやLyftが台数規制

ニューヨーク市の名物といっても過言ではないイエローキャブ(黄色いタクシー)は、もはやUberやLyftといったライドシェアサービスに取って代わられてきました。2015年まで1万2600台だったライドシェアは、今年には8万台まで増加し、どこに行ってもアプリベースで簡単に、更に安価に使えるUberやLyftを利用できるようになってきました。

写真:NYC Taxi & Limousine Commission

⬆️上の図の赤が、ライドシェアサービス。2013年あたりから急増しています。

そんな中、今年に入ってタクシー運転手の自殺が相次ぎ、問題になりました。ライドシェアサービスに職を奪われ、生計が立たなくなったからです。更に既存のタクシー業界は、ライドシェアサービスの台頭に対抗しようと先を競って都市部に密集するため、タクシーとライドシェアのせいで交通渋滞が起こるという皮肉な状況まで生まれました。

そんな問題もあり、ニューヨーク市はUberやLyftなどライドシェアサービスの台数規制を行いました。

規制の内容は、ライドシェアサービスの新規ライセンスの発行を1年間停止するというもの。これによって、一時はライドシェアの急成長を差し止めたわけです。

ニューヨークは電動アシスト式自転車も禁止

ニューヨークは、2018年の1月に電動アシスト式自転車も禁止にしました。

それまでのニューヨークでは、電動アシスト式自転車(通称E-bike)はメッセンジャーにとってかけがえのない存在でした。1日に12時間以上も自転車の上で過ごすメッセンジャーは、少しでも早く荷物を届けるために裏道を使い、抜け道を使い、スペード命で仕事をしてきたそうです。

当然、電動アシスト式自転車はそんなメッセンジャーには必須のものだったのですが、市は禁止にしました。信号を無視し、時には逆走までするメッセンジャーが、歩行者や自動車にとって危ないものとして深刻な問題になったそうです。市は電動アシスト式自転車を取り締まるため、使用違反で最高罰金$500を徴収するなどして市は規制を強めています。

電動スクーターもニューヨークは許可せず

アメリカでは、ここ半年(2018年2月以降)電動スクーターが大ブームになりました。短時間で環境に負荷もかけずに都市を移動できるスクーターは、サンフランシスコのスタートアップを起点に広まり、ワシントンDCでもすでにサービスを開始しています。

電動スクーターはGPSが搭載されていてアプリで管理しているため、駐輪場がなくてもどこでも乗り捨て自由。また、自転車用レーンを走行するため、歩行者にも自動車にも迷惑を被ることがないとのこと。

しかし、電動アシスト式自転車すら禁止されているニューヨークでは、当然このブームに対する答えもNO。「街の密集度が高く、自転車専用道路も足りないニューヨークでは、走行スペースの確保が難題」だそうで、ニューヨーク市はとにかく新しいサービスを拒絶し、交通量を下げるので精一杯なよう。

マンハッタンは何を望んでいるのか

既存のタクシーに代わるシェアライドサービス、電動アシスト自転車やスクーターなどあらゆる交通手段を規制し、拒み続けるニューヨークは結局何を目指しているのか。ニューヨークに住む私たちはどうやって街を移動すればいいのか。

都市はもっと歩いてほしがっている

2016年夏、ニューヨークは「ザ・グレート・ロウアー・マンハッタン自動車実験」を行いました。マンハッタンのダウンタウンの一角を5時間歩行者とサイクリスト専用とし、自動車を締め出したこの試みは世界でも注目を浴びました。

マドリード、パリ、ロンドン、上海のような大都市は、クルマよりも歩くことを促進するようになっていて、現に歩くことは市民の健康状態を高め、社会的交流を生む場を作り、更には大気汚染の現象にも繋がるといいます。

ニューヨークでは2008年にも、年に1度週末に大通りでストリートフェアを行う「サマーストリート」というイベントを行いました。普段、大量の車が占めるブロードウェイやパークアベニューなどで行ってきたこのイベントから派生して、2015年にはニューヨーク市はタイムズスクエアを歩行者優先の空間に変身させることに成功しました。写真で見ると一目瞭然です。

タイムズスクエア中央 写真:Curbed NY

Bank of America前の変化 写真:Inhabitat

街の中心街に位置するもっとも交通量が多いエリアを再設計し、歩行者にとって使いやすいようにする取り組みは実は1970年代からいろんなところで行われてきましたが、都会の商業地区を「歩行者用ショッピングモール」に変えようとした計画の多くは失敗に終わってきました。

ただ1970年代と今では状況も大きく違います。当時は、街に歩行スペースを増やしたところで、ストリートの治安は健全とは言えず、犯罪率をあげてしまう結果に陥ってしまいました。しかし、現在は治安も改善され、再度ニューヨークの道路を歩行者に少しずつ明け渡す準備ができてきています。

最後に

ニューヨークがUberやLyftを規制している背景がいまいちピンときませんでした。今までは、単純にタクシーの利権を守るためだとばかり思っていたからです。スクーターや電動アシスト式自転車を規制するのも意味が分からず、ニューヨークの新しいものに対する規制にはうんざりしていました。

しかし、ニューヨーク市は今交通そのものを減らそうとしています。歩行エリアを増やし、バイクレーンを整備することで歩行者とサイクリストに道路を優先させ、クルマを減らしていく試みをしている中でカーシェアやスクーターなど新興サービスが登場するのが邪魔で仕方ないんです。

カリフォルニア州フレズノの2013年の調査によれば、クルマを規制し歩行を中心にした街を作るには3つの要因が重要だと言っています。

  • 大学やビーチのようなコミュニティの要となる主な場所に近いこと
  • クルマの代わりとなる交通手段を提供すること
  • 力を注ぐ場所を数ブロックに限定すること

この3つの要因から見るとマンハッタンは、タイムズスクエアから車を締め出したように、エリアごとに改革を進めていくのだと思います。

この調査では、クルマの代わりとなる交通手段が必要と言っていますが、ニューヨークでその位置を占めるものはなんなのでしょうか。それが自転車なのか。はたまた、スクーターが解禁されるのか。正解はまだ分かりません。しかし忘れてはならないのが、カリフォルニアとニューヨークの決定的な違いである気候。道を歩行者に譲り、自転車の地位を高めたところで寒さが厳しい冬のニューヨークにとってそれが正解の都市の在り方なのかどうかは分かりません。

今後、ニューヨークはどんな都市を目指していくのか。道路を制するのは誰なのかまだまだ注目です。

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▼筆者のプロフィール

ABOUTこの記事をかいた人

たいと

ニューヨークの大学に留学中の23歳。 絵は描けないけど美大生。 『アートをもっと身近に』をテーマにアウトプット。海外生活や旅のことも書きます。 現在、ニューヨークで若者のクリエイターコミュニティを運営中。